見送り

 

列車は静に動き始めた

ゆっくりと母の顔が右から左へと移動していく

母は片方の手にハンドバックをさげ

もう一方の手で優しく

その手で手を振った

僕もそっと手を出し左右に小さく振った

ちょっと恥ずかしいような気がした

窓ガラスの外から

『気をつけて行って来るんですよ』

『伯父さん、伯母さんによろしく言ってね』

という母の声がかすかに聞こえた

僕は黙ったまま母の目を見た

母は少し心配そうな目つきをしていた

「僕なら大丈夫」と顔で示した

列車は徐々にスピードを増してきた

母は見送る人や列車を待っている人々の中に

ぽつんとあった

まだ手を振っていた

それが何となく嬉しかった

母はだんだん小さくなった

そして人込みの中に消えた

空には白い雲がぽっかりと浮んでいた

 

~中学・高校の頃の作品より

2003.06.01

 

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